カテゴリ:そして、ありがとう( 6 )

春が来る

朝から職員室で呼ばれて、
振り返ったら、ゆい(仮名)が泣いてた。

彼女が何で今泣いているのかはわからないけれど、
彼女が泣く理由なら、思い当たりすぎた。
明るくて元気で素直な彼女が、
大きくて重たいものを抱えているのは感じながら、
それでも、彼女のいちばんつらかったことに、
気づいてあげられなかった自分を知ったのは、つい最近のことで・・・。

「おいで」って連れて行って、保健室の中、
ゆいが、胸の中の思いを、もしも吐き出したいなら受けるつもりでいたけれど、
たぶんまだそんな時期にも至っていない。
喋らせることがいいことなのか悪いことなのかもわからない。

だから少し待って、喋る分だけを聞いて、
そのあとしばらくの間、黙ったままの時間が過ぎたあとで、
ふと思い出して、色画用紙とはさみと、
小学校の先生から分けてもらってあった型紙を、持ってきた。


無理に事情を聞きだしたところで、
今すぐ私が彼女を救える術があるわけでもなく、
せめて出来ることがあったとしたなら、
穏やかで優しい時間の記憶を、30分ぶん、一時間ぶん、
増やすことくらいで・・・・・・・・・。



緑の色画用紙で、黙って草の形を切り抜いたあとで、
「ゆいちゃん、蝶々、切ってくんない?」って言った。
「明日から三月だから、廊下に飾るんだ」って、はさみと型紙を渡して…。




彼女の座る窓辺の、ひだまりのあったかい場所で、
二人で黙々と、花や葉っぱや蝶々を、切り抜いていた。


「先生、蝶々、いくつ作る?」
「ねぇ、先生、違う色の桜も切っていい?」
「先生、雲も作ろうよ」


そんなゆいのことばに答えながら、
はさみを動かしながら、
陽射しの明るさとあったかさを感じながら、
癒されていたのは、たぶん私のほうだ。

ゆいのしあわせな記憶を、ひとつでも増やしたくて、
私の、しあわせな記憶が、ひとつ増えていった。
ゆいがこのことを憶えているかはわからないけど、
私はきっと、この今の空気を忘れないな・・・って思った。


ぎゅ…っと胸をつかまれるようなせつなさを感じながら。


明るい、あったかい場所で、
なんだか泣きそうになりながら………。



幼稚園の子どもがこさえるような、
草と花と、葉っぱと蝶々と、雲を並べた稚拙な貼り絵を作って、
ゆいと二人で、達成感を味わった。



迎えに来てくれたママは、初対面だけど思っていたよりしなやかな人たった。
担任の先生に話す声が聞こえた。
「情けないですよ、あれだけ啖呵切っといて、娘守れなくて・・・。
でも、ここからは私がサポートして行きますから」って。
お母さんもこれから大変だろうと思うけれど、
心強いことばを聞いて、
最悪の中でも、最善の方向に
動いていこうとしているんだなと思えて、少し安心した。


ゆいは、弱虫じゃないから、
きっと、大変でも、時間がかかっても、
しあわせに向かって頑張れるだろう。


春にはたぶんお別れになるゆいに、
結局、何もしてあげられなかったけれど、
せめて、私がもらった優しい記憶のぶんだけ、
「ありがとね」って、伝えた。





二月も今日で終わるね。
また、今年も、春が来るんだね・・・・・・。
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by noraneko_89 | 2008-02-29 23:40 | そして、ありがとう

素敵な養教

地区の学習会的な集まりがありました。
講師は、『健康教室』などでおなじみのO川H子先生(同業者の方はわかりますね)。

一日日程で、午前は講演、午後は実習(教材作り)だったようですが、
私は残念なことに午前中に別の出張が入り、午後だけの参加となりました。
午前のお話も聞いていないし、いきなり教材を作れと言われても・・・と
戸惑う半日だったのですが、O川先生に接するだけで元気をもらえた気分です。

素敵な養教さんに出会うと、「ああ、私って、すごく素敵な仕事をしているんだわ」
という気分になります(実際私は、素敵な仕事を出来ていないかもしれないけど^^;)。
もっともっと頑張らなきゃ、皆さんのお役に立てるようになりたーい!という、
殊勝な気持ちにもなります。


休みボケ&夏疲れ、で、すっかり気力が落ち込んでいた私ですが、
この半日で、なんだかやる気が出てきました。

O川先生、本当にありがとうございます。
私も、も少し、素敵な養教になれるように、がんばって見ますね♪
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by noraneko_89 | 2006-08-30 23:56 | そして、ありがとう

明日は卒業式♪

楽しみだ・・・卒業式。

明日を最後に、あの「猿」とも、「魔女」とも、「オランウータン達」とも、
私は縁を切るのだ。
キミタチは、それぞれに、自分の未来を自分で築いていってくれ、
もう、わたしは、知らん・・・。
来週からは、キミタチの保育に悩まされることもない。
その発言に傷つくこともない。
あー天国♪

・・・なのに・・・。

なんだろう、「寂しい」ぞ。
そんなはずはないのに、私はこの日を待ちわびていたのに。
どうしてだろう、ただただ、今は、
キミタチがちょっとずつでも素敵な大人に近づいていってくれることを望んでいる。

はぁーーーー、ヤキがまわったって、こういうことかもしれねーな。
あんなことも、こんなことも、あぁぁんなこともあって、
あんたたちには、ほとほと愛想も尽きたはずなのに、
しあわせな大人になって欲しいと、どこかで望んじまっている、
「年とるって、こういうことなのかぁぁぁぁぁ!!!」


でも、ま、いまさらじたばたしてもしかたないね。
自分とかかわった子どもには、ちょっとでも素敵な大人になってもらえたら・・・と思う、
これは、職業病みたいなものなのかもしれない。
結局「高校辞めた」「クビ切られた」「○○で捕まった」・・・なんて聞いて
またあらためてがっかりすることになるんだけど、
それでも、「頑張れ」と言ってしまう、しょーもないオトナたちを許して欲しい。
今日、この日だけは、素敵な笑顔を見せて欲しいと思ってしまうオトナたちを・・・。

明日からのキミタチに、また困難は尽きることなく降りかかるかもしれないけれど、
それを乗り越えてくれたなら、どれほど嬉しいかと、
願ってやまないバカなオトナが大勢いることを、
どうか忘れないでいて欲しい・・・・・・。


卒業おめでとう♪
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by noraneko_89 | 2006-03-09 23:06 | そして、ありがとう

卒業生の訪問

卒業生が遊びに来た。
ここで詳しいことを書くわけには行かないのだけれど、
本当に、まあ、蔭ながらいろいろあった卒業生。
今は、定時制の高校に通いながらアルバイトをしている。

去年卒業してから、何度か逢いにきてくれたけれども、
逢うたびに彼女は大人になっていて、
そのことに私が励まされる。

今日はこんなことを言っていた。
「私、結婚したくないんです。結婚して、養われるって、人の世話になって生きるって
なんだかイヤで、自分の力で生きて行きたいから・・・」

結婚するしないは、まぁともかく、
コレが、一年前には「大人になったら働かなきゃいけないから、大人になりたくない」
と言っていた女の子の言葉かと思うと、こちらは目を見張るばかり・・・。

お金がすべてではないけれど、「稼ぐ」「稼げる」という体験は
確実に彼女をエンパワーメントしてくれている。
自分の力で、自分が生きていくためのお金を稼ぐ・・・という実体験によって、
ものすごく、彼女は、自分自身とその力に自信を持つことが出来るようになっていっている。
・・・そのことが、私にとってはとてつもなく嬉しかった。


彼女の元担任が、顔を見に来てくれたとき、
保健室には「イロんな事情」の在校生たちが集まっていた。
「ほら、アンタも自分がしてもらったことを、
こういう後輩に還していかなくっちゃ」
何気なくそう言った元担任のコトバに、彼女は、
「うん、だって、今、私の夢は保健の先生になることですから」
と答えた。

「保健の先生になるには、二通りあって、看護師さんになってから
1年学校に行くか、高校出てから、その専門学校か短大に行くか・・・」
彼女は、そう話してくれた。
そのふたつがすべてではないけれど、本気で、きちんと、
調べていることがわかった。

「よく調べたね」
というと、
「保健の先生になるっていうの、私の初めての夢だから」
と、彼女は言ってくれた。


私はすごく嬉しかった。
いつもどこか刹那的で、エネルギーの持って行き場が見つからなくて
将来に絶望していたような彼女が、目標を持ってそこに向かっていこうと
思えるようになったこと、その力だけで、こちらが勇気づけられた。

実際に、彼女が養教になるかどうかは、まだ全然わからない。
こんなふうに、目標を持って、明るい、強い瞳で世の中を見ることが出来るようになったら、
他にもたくさん、楽しそうなことやしたいことを見つけられるだろうし、
そしてそっちに目標が移っていくことは全然かまわない。

ただ、そういう目を持つようになったきっかけが
『保健の先生になりたい』という思いであったこと、それを、
私は誇りに思うし、それより何より、とても、ありがたいと思った。
感謝したい気持ちだった。

彼女に恥じない養教でありたいと、
心からそう思ったな・・・。
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by noraneko_89 | 2006-02-17 23:16 | そして、ありがとう

卒業生から・・・

昼間、卒業生から電話があった。
もう、10年位前に卒業して、今は結婚して子どもが一人。
その、1歳になる赤ちゃんの調子が悪くて「大変~(><)」という話と、
「熱が下がらなかったらこの前もらった坐薬を使ってもいいのかな」
という質問だった。

考えてみると不思議。
今、私は彼女の生活の中に存在してはいないのに、
ふと、自分の子どもに坐薬を使おうかどうしようか・・・なんてときに
私のことを思い出してくれる。
私は子どもを産んでも育ててもいないし、
彼女の周りにだって、友だちも先輩もいるだろうに・・・。

若い日のかかわりの中での生徒だったからなんだろう。
最近はもっと子どもとの距離をとっているから
今後の卒業生には、こんな子はいないんだろうな・・・と思う。
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by noraneko_89 | 2005-04-29 22:36 | そして、ありがとう

やっぱり、コレが最高だ

今日は「お嬢様方」ダレダレの日でもありました。
目の回り真っ黒に縁取って、頭痛のしそうな香りをプンプンさせた少女たちが、
「頭痛い」「気持ち悪い」「だるい」・・・と集合・・・・・・。
精神的に、結構きつい仕事です。

その中で、何度も「お腹痛い」と授業を途中で抜け出しては
勝手なことを喋って何とか教室に戻っていた「お嬢様」が、
何度目かに保健室を出るときこう言った。

「また、お腹痛くなったら来るから。先生と話していると、お腹痛いの治る」


・・・ああ・・・、そうだったね、そういうのも、私の仕事だったよね。
なんだか最近、追い立てられる気持ちばかりで余裕をなくしていて
忘れていたことを思い出させてもらった気がした。

「そんなに具合悪いんなら、帰んなさい!
ここは病院じゃないんだからね」

そんなふうにキレるしかなくなっていた自分を、ほんの少し反省したな。
うーーー、あんな「メバリ娘」に学ぶとは、
ヤキがまわったもんだ・・・(笑)。

だけど、
ほんとのこと言うと、すごく嬉しいひとことだった。
それだけで、明日を待てる気分になるよ。
「明日も頑張らなくっちゃ」じゃなくって、
「明日もあの子に会いたいな」って、
それを楽しみに思えるようになる・・・。

ありがと、ね。
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by noraneko_89 | 2005-04-26 00:09 | そして、ありがとう